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死に数学は効かない

あらゆることを。

美しい世界を閉じ込めておきたいと願った少女は
瓶詰めされていた魚を殺してしまった
魚は水面を揺らしながら浮いていたが、少女のことを怨んでなどいなかった
魚は少女のことが好きであった
愛していたと言っても過言ではなかった
少女の目に見つめられながら、エサを与えられるのが、狭い世界にとって唯一の極楽だったのだ
外の世界を知らぬ魚は、少女の微笑みだけが太陽であった
魚は少女のために泳いでみせた、少女のために呼吸をした、少女のために鱗を煌めかせた
魚は少女のものになりたかった
死ぬことで魚は少女のものになった
少女は世界を手に入れた
魚は少女を手に入れた
一人と一匹は、幸福であった


少女は大人になった
もう、魚を思い出すことはなかった